残酷なテレビのテーゼ
Posted at 07/12/12 PermaLink»
今週の『ロンドンハーツ』の「格付けしあう女たち」は久々に傑作でした。にしおかすみこというバラエティー勘の鈍いエンタ芸人が、このどぎつい企画でようやくその本性をさらけ出したのです。番組を見ていない人のために一言で説明すると、彼女は本来演じるべきキャラクターを忘れて、本気で号泣してしまったのです。
一般視聴者の私たちはしばしば忘れがちなんですが、基本的に、テレビに出ているタレントというのはまともな人間ではありません。毎日のようにテレビに露出して、数百万、数千万人の勝手な評価を浴びて平然としていられるのはきわめて異常なことです。
本当とウソの境い目ギリギリのところで展開される現代バラエティー番組の現場というのは、そんなテレビ空間の中でも最もエキサイティングでスリリングな場所です。「格付けしあう女たち」はその中でもさらに最先端の企画。そこではいかなるタレントも女優も女芸人も、己のすべてをさらして勝負しなくてはいけないのです。
『エンタの神様』という檻の中で純粋培養されたにしおかすみこには、この猛獣うごめくサバンナを自力で生き延びるだけのスキルはありません。でも、彼女はライオンやチーターに噛み付かれ、ぼろぼろになって泣きじゃくりながら、その姿をさらして意図せぬ笑いに何とか着地することができました。それはそれで成立する、ということになったのです。
弱い人間や能力のない人間は、その能力のなさまでも全部さらけだして初めて肯定されうる。この残酷なテーゼが支配するテレビ・お笑い空間の厳しい現実を目の当たりにしながらも、にしおかのひどい泣き顔に心から爆笑する。これこそが、最先端バラエティー番組『ロンドンハーツ』の正当な楽しみ方というものでしょう。